巻第四 飲食 下
1 倹約と養生
早晩(朝夕)の飲食は一杯の酒と一きれの肉と言われていましたが、一杯の緑茶と一切れの魚肉の方がいいでしょう。
仲間との会食であれば一杯の酒と1皿の主菜を加えるのはいいでしょう。減らすことはあっても、増やすべきではない。
一に曰く、分を案じて以て福を養なう。
二に曰く、胃を寛くして以て気を養なう。
三に曰く、費をはぶきて以て財を養なう。
これは、倹約と養生のふたつのためになる言葉である。役立てよう。内容は少し難しいけど、朝夕の食事は質素にして、客がきたら少し豪華にし、毎日を幸福に暮らし?、胃腸を大事にし、浪費することなく財をためるという、内容。
2 一品の副食
朝夕の食事には、副食は一品でよい。
味噌の類か、塩辛か、あるいは漬物を一品付け加えてもよい。塩辛は塩分の問題があるので注意したほうがいい。
吸物は、裕福なひとであっても一つでよい。
客に二つ用いるのは、もし一つ目が気に入らないとき、二つ目をすすめるためである。普段は、一つでよい。
3 野菜の煮かた
松茸、筍、豆腐などの味のすぐれたものは、それらただ一種類だけを煮て食べるのがよい。
ほかのものと一緒に煮ると味が悪くなる。味が悪いと身体の養分にならない。
4 餠とだんごの食べ方
餅や団子はできたてであっても、煮るか焼くかしないと消化に悪い。蒸したものより煮たものの方がやわらかく消化しやすい。
餅は数日たってから焼いたり煮たりして食べるのがよい。
5 朝食と夕食
朝食が油っこいものであったら、夕食はあっさりしたものにしよう。夕食が味のこいものであったら、次の日の朝食は少なめにするのがよい。夕食よりも朝食を充実させることが必要である。
6 新鮮な食物
いろいろな食物があるが、すべて新鮮なうちに食べるのがよい。新鮮でないものには、体によくない。
また香りの悪くなったものもよくない。
7 食物の陰と陽と
どんな食物も、時間がたつと悪くなる。悪くなった食物は食べてはいけない。穀物、肉類、魚、鳥の肉、野菜、すべて時間がたつとよくない。それらのものを食べると、胃腸を悪くする。
水も汲んだ後、時間を置くとよくない。でも、天日にほして色が変わったものや、塩づけにしたものはそうでもない。
8 陰の食物
夏、暑いときに蓋をしたところに長く置いておいたものは、熱気のために悪くなる。そのようなものを食べてはいけない。
9 瓜を食べるとき
瓜類は、涼しい風が吹くときや秋になり冷えた時期になったら食べてはいけない。夏の暑い盛りに食べるのがよい。
10 火毒
火で焼いたもちや肉は、熱湯に少しひたしたあとで食べるのがよい。そうしないと、唾液が乾いてしまう。また慢性の咽の病気によくなる。
11 茄子の性
茄子は、生で食べるといけない。煮たものでも、下痢や熱の高い病気のときなどは、とくに食べてはいけない。そのほかの病気のときは、皮をむいて切り、米のとぎ汁にひたして、一晩か半日たってやわらかく煮て食べれば、害はない。
葛粉は、水でこねてすじ状に切って、水で煮て、さらに味噌汁に鰹の粉末を加えて再び煮て食べる。下痢を止めて異を助ける。保養になる。
12 大根などの調理
胃の弱いひとは、大根、人参、芋、山芋、牛蒡(ごぼう)などを薄く切ってよく煮て食べるがよい。大きくしかも厚く切ったものや、十分に煮ていないものはみな胃腸を悪くする。一度うす味噌かうす醤油で煮て、その汁にひたして半日か一晩おいて、ふたたび前の汁で煮ると、大きく切ったものでも害がなく味もよい。
鶏肉や猪の肉などもこのようにして煮るのがよい。
13 大根の効用
大根は野菜の中でもっとも上等なものである。つねに食べるのがよい。葉っぱの堅いところをすててやわらかな葉と根とを味噌でよく煮て食べる。そうすると、脾臓(血液の生成、浄化作用をする臓器)をたすけて痰を取り去り、血液の循環をよくする。
14 葉の調理
菜は
京都では、はたけ菜、水菜の類であっても田舎ではそれを京菜という。いわゆる、かぶの仲間である。味は良いが体にはよくない。
15 果物の食べ方
いろんな果物や干し菓子などは、火に通して食べれば害はない。味もよい。まくわうり(メロンの一種、干せば嘔吐剤・下剤になる)は、種をとって蒸して食べる。味もよく胃にも害はない。熟した柿も甘柿も、皮とともに熱湯で温めて食べるのがよい。干し柿は、火にあぶって食べればよい。どれも胃腸の悪いひとにも、害はない。なしは、蒸して食べると多少よいが、胃腸の悪い人は食べてはいけない。
16 食べてよいものわるいもの
病状によって食べていいものと悪いものがある。だからよく考えて食事をしないといけない。また女性が妊娠しているときは、食べてはいけないものが多いので気をつけなくてはいけない。
17 豆腐の食べ方
豆腐は毒気がある。でも新しい豆腐を煮て味がよいものは、それに生大根のおろしを加えて食べるのなら害はない。湯豆腐のことだろう。
18 食事のとり方
前に食べたものが消化しないうちに次の食事をしてはいけない。
19 薬の服用と味つけ
薬を飲むときは、あまいもの、油っこいもの、獣肉、果物、もち、だんご、生もの、冷えたものなどは食べてはいけない。また、大食すると薬の効力が少なくなる。酒はほんの少しにひかること。補薬(衰えた精力を補うために用いる薬)を飲むときは、これらをさけるのがよい。とにかく薬を飲むときは、味の薄いものを食べ薬の効果をよくすることだ。
20 大根・山芋などの食べ方
大根、菜、山芋、芋、くわい(オモダカの球茎。)、人参、かぼちゃ、白ねぎなどの甘い菜は、大きく切って煮て食べると、体の調子が悪くなり腹痛を起こすことがある。薄く切ってたべるのがよい。または、辛いものを加えるか酢を少し加えるのもよい。再度、煮るのもよい。このようなものは、一時に多くを食べてはいけない。生の魚、脂ぎった肉、味の濃いものなども、同じである。
21 生姜と眼病
生姜を、8月、9月ごろに食べると、よく年の春に眼病になるという。(本当だろうか?)
22 温かいものを食べる
豆腐、こんにゃく、山芋、くわい、蓮根などを醤油で煮たものは、すでに冷えて温かでないものは食べてはいけない。
23 腹鳴りと朝食
夜明けのころ、腹がごろごろ鳴って、食物が消化しないで不快なときは朝食を減らすのがよい。肉や果物などは特に食べないほうがよい。
24 飲酒のあと
飲酒の後、酒が残っているときは、もち、だんご、米麦など、干菓子、果物、甘酒、にごり酒、脂っこいもの、甘いもの、消化しにくいものなどは食べてはいけない。酒が体に回ってよくないからである。
25 鳥獣の肉と調理
鶏肉の堅い肉は、前日から醤油や味噌汁で煮て、その汁をもって翌日ふたたび煮るとかりに大切りの肉でもやわらかくなって味もよい。そして消化もよい。大根も同じである。
26 餠の
薬用餅を薄切りにして、山椒など加え味噌で長く煮たものは、脾臓の弱い人や下血(血便)をする病人にはよい。大切りにしたものはよくない。
27 果実の食べごろ
果実は熟したもの以外は食べてはいけない。果実のなかには毒のあるものもある。山椒の口を閉じているものは毒がある。
28 怒りと食事
食事の前後に怒ってはいけない。また心配事をしたまま、または食後のあとに心配をしてはいけない。
29 消化と食事
いくら体にあった食物でも、それが消化しないうちに続けて食べてはいけない。
30 夜食の分量
長い冬、寒さを防ごうと夜食をとろうと思ったなら、夕食時、食事の量を減らしておく。夜に招待を受けたときなどは、夕食を減らしておく。そうすれば、身体にさほど害は少ない。食欲にまかせて腹いっぱい食事をしてはいけない。
31 湯茶の多飲をさける
塩分の少ない食事をしていると、喉がかわかない。そうすると内臓に湿気がたまらず、胃が元気になる。
32
中国・朝鮮の人と日本人
中国や朝鮮の人は胃腸が強いので、ご飯や肉類などを多く食べても害はならない。しかし日本人はそれらの人よりも身体が弱いので、穀物や肉類を多く食べると害になる。
33 空腹と果物
空腹時に生の果物を食べてはいけない。また菓子なども多く食べてはいけない。胃腸に負担がかかるからである。
34 労働と多食
労働してひどく疲れた直後、食事をとると眠たくなる。食後の睡眠は体によくないので、ひどく疲れた直後は食事をしてはいけない。疲労がとれてから食事にすべきである。
35 多飲、多食の患い
色欲は断つことができるが、飲食は絶つことはできない。それゆえ食欲に負け、大食することが多い。
36 病人の望みをかなえる法
病人がとても欲しがっても、食べて害になるものや冷水などは与えてはいけない。でも、飲み込まないで味だけを味わわせるのならかまわない。穀物、肉、吸物、酒などは味を楽しむものであり、飲み込まなくてもよいものである。冷水なども口のなかに留めておくなら、口中の熱を取り、歯茎を強くする。
37 多食してはいけない食物
多く食べてはいけない食物は、次のようなものである。餠の類、だんご、ちまき、干菓子、ひやむぎ、麺類、まんじゅう、そば、砂糖、甘酒、焼酎、小豆、酢、醤油、鮒、どじょう、はまぐり、うなぎ、えび、たこ、いか、さば、ぶり、塩から、鯨、生大根、人参、山芋、菘根(青菜か蕪の根)、かぶら、脂肪の多いもの、味の濃いもの。
38 老人・虚弱者の食べてはいけないもの
老人や虚弱なひとが食べてはいけない食物。それは次のとうりである。いっさいの冷たい生もの、堅いもの、ねばっこいもの、脂肪の多いもの、ひやむぎ、冷たくて堅い餠、だんご、ちまき、冷えたまんじゅう、その皮、堅い飯、生の味噌、甘酒のつくりのよくないものと冷たい甘酒、鯨、いわし、しび(まぐろ)、かます、いろいろな果物などである。
39 食べてはいけないもの
誰でも食べてはいけないもの。それは生の冷たいもの、堅いもの、熟していないもの、ねばっこいもの、古くなって味の変化したもの、製法が疑問なるもの、塩からいもの、酢の多すぎたもの、煮たての味を失ったもの、臭いのわるいもの、色のわるいもの、味の変化したもの、魚肉の古いもの、肉の腐敗したもの、豆腐の古いもの、味のわるいものや煮たての味を失ったもの、冷たいもの、素麺に油のはいったもの、すべての半煮えのもの、灰汁の混じっている酒、酸味のある酒、時期でなく熟していないもの、すでに時期のすぎたものなどは食べてはいけない。夏期に雉肉を食べてはいけない。魚や鳥の皮の堅いもの、脂肪の多いもの、ひどく生臭いもの、魚の目が両方ちがうもの、腹の下が赤いもの、自然死した鳥で足が伸びないもの、毒矢にあたって死んだ獣、毒を食べて死んだ鳥、肉の干したもの、雨だれ水にぬれたもの、米びつの中に入れておいた肉、肉汁を器物に入れて気をとじ込めたものなどすべて毒がある。肉、干した肉、塩づけの肉、夏をすぎて臭と味のわるい肉などみな食べてはいけない。
40 食医の官
古代、中国に食医という官があった。それは食事によってすべての病を治すという。食事とは養生の基本である。薬はやむえないときにだけ使うものである。
41 同食の禁
いわゆる食い合わせてわるいものが多いので、ここに記して注意したい。
豚肉に、生姜・そば・胡すい(コエンドロ【coentro ポルトガル】セリ科の一年草。南ヨーロッパ原産の香味料・薬用植物。高さ三○〜六○センチメートル。茎は細く直立、茎・葉ともに特異な香気があり、カレー粉・クッキーなどに用いる。葉は細裂した羽状複葉で、互生。夏、小白花を複散形花序につける。果実は小円形で、生薬の胡すい実(コスイジツ)として香味料または健胃・去痰(キヨタン)薬。コリアンダー。漢名、胡すい。)・炊豆・梅・牛肉・鹿の肉・すっぽん・鶴・鶉などがわるい。
牛肉に、黍(きび)・にら・生姜・栗などかいけない。
兎肉に、生姜・橘の皮・芥子(カラシ又は、がいし、カラシナの種子。)・鶏・鹿・かわうそ(日本にまだいるだろうか?)などがいけない。
鹿に、生の菜・鶏・雉・蝦(えび)などがいけない。
鶏肉と卵に、芥子・にんにく・生葱・糯米(もちごめ)・すもも・魚汁・鯉・兎・かわう
そ・すっぽん・雉などがいけない。
雉肉に、そば・きくらげ・胡桃・鮒・なまずなどがいけない。
野鴨に、胡桃・きくらげがいけない。
鴨の卵に、あんず・亀の肉がわるく、
雀肉にはあんず・あじ味噌がわるい。
鮒に、芥子・にら・飴・鹿・せり・雛・雉などがいけない。
魚鮓に、麦のあじ味噌・にんにく・緑豆(マメ科の植物)などがわるく、
すっぽんの肉にはひゆ菜(学名アマランサス、インド原産の一年草)・芥菜・桃・鴨肉などがわるい。
蟹に、柿・橘・なつめがわるく、
すももには蜜がわるい。
橙や橘にはかわうそ、
なつめには葱、
枇杷(ビワ)には熱い麺類、
楊梅(ヤマモモ)には生葱、
銀杏に鰻、
瓜類に油餠、
黍や米には蜜がいけない。
緑豆に榧(かや)の実を食べ合わせると死ぬ。
ひゆにわらび、
乾筍(ほしたタケノコ)に砂糖、
紫蘇(しそ)の茎葉と鯉、
草石蚕(ちょうろぎ、野菜の一種)に魚類、
なます(魚貝や獣などの生肉を細かく切ったもの。薄く細く切った魚肉を酢に浸した
食品。大根・人参を細かく刻み、三杯酢・胡麻酢・味噌酢などであえた食品。などのこと)に瓜・冷水、菜瓜になますなどはいけない。
また酢につけた肉に髪が入っているのを知らずに食べると害になる。
麦のあじ味噌と蜂蜜とを同時に食べてはいけない。
越瓜(南越にとれた瓜。皮が白い)と酢づけの肉。
酒のあとに茶を飲んではいけない。腎をそこねるからである。酒の後に、芥子や辛いものを食べると筋肉や骨を悪くする。茶と榧とを一緒に食べれば身体がだるくなる。
日本の社会では、わらびの粉を餠にして、緑豆をあんにして食べるとひとを殺すという。またこのしろ(たなごに似た魚)を木棉子の火(木綿を燃やした火のことか?)で焼いて食べるとひとを殺すし、胡椒と沙菰米(「いさごまい」と読むのかな?判らない)を同時に食べるとひとを殺すともいう。
また胡椒と桃・すもも・楊梅とを同食してはならない。
またいう。松茸を米びつの中に入れておいたものを食べてはならない、と。
また南瓜をなますに合わせて食してはいけないともいう。
食べ合わせで、いけないものは結構あるものだ。
42 薬と食物
黄ぎ(マメ科の植物、強壮剤)を服用した人は酒を多く飲んではいけない。
甘草(同じくマメ科の植物、鎮咳、解毒剤)を飲んだ人は菘菜を食べてはいけない。
地黄(薬草)を服用するには、大根とにんにくと葱(ねぎ)の三つの白いものをさけること。菘は食べてもよい。
荊芥(シンケイ科の植物、発汗剤)を飲むときには生の魚をさける。
土茯苓(ユリ科の植物、利尿剤)を飲むには茶はよくない。
これらのことは守らないといけいない。結果がわかっているので、理由が分からなくてもこのことは守らないといけないのである。
43 肥料と食物
すべての食物の中で、一番汚れているものは、畑で栽培された菜である。肥料として使っている、人糞(もう、使っていないところが多いと思うけど)で汚れているのだ。一夜、もしくは一日、水を張った容器にいれておき、よく洗ってから食べるのがよい。
自然にできた菜や、瓜、茄子、ゆうがお、冬瓜などは汚れてはいない。
飲酒
44 酒は天の美禄
お酒は、天から与えられた褒美である。ほどよく飲めば、陽気になり消化を助け、心配事から開放され、やる気を出す。しかし、多く飲めば害になる。たとえば火や水は人の生活になくてはならないものであるが、同時に火災や水害ももたらす。そういうものである。
45 多飲の戒め
お酒というのは、人によって多く飲める人と飲めない人がいる。少ない量で気持ちよくなる人は、多く飲む人より酒代が少なくてよく、経済的である。日々我慢をせず、多く飲むことが習慣になってしまうと、身を崩してしまう。慎まなければいけない。
46 食後の酒
お酒は、朝夕の食後に飲むならば害はない。その間の空腹時に飲むと害になる。朝の空腹時に飲むのは、もっともよくない。
47 酒の温度
お酒は夏冬に関係なく、冷酒や熱すぎるものはいけない。ほどよく温かいのがいい。冷酒は胃腸を悪くし、飲みすぎることが多い。熱いお酒は、気が高ぶりすぎる。
48 温めなおした酒
酒を温めすぎると味を失う。温めたものが冷めて、もう一度温めなおしたものは胃腸によくない。飲んではいけない。
49 酒のすすめ方
酒をすすめるとき、その人の飲める量を知らないときは、少しずつすすめる。あまり多くすすめると、飲む人の身体に害を与える。酒をすすめられると、普通より多く飲む人がいるので、飲む量は飲む人の判断にまかせるのがいい。
酒をすすめられる人も、いたずらに辞退するのではなく、程よく酔って、ともに楽しむのがもっともよいことである。
50 濁酒と醴酒と
市販のお酒に灰汁を入れたものには、毒がある。酸味のあるお酒も飲んではいけない。長い間保存した酒で、味が変わったものにも毒がある。
濁り酒は濃いものは、胃腸に長く留まるので飲んではいけない。混じりけのない芳醇な酒を朝夕の食後に少し飲むのがいい。甘酒は清潔に造ったものならば、すこし熱くして飲むと体を温める。製法の悪いものや冷えたものは飲んではいけない。
51 酒と命
長寿な人たちは、ほとんど酒をのまない。お酒を多く飲む人が長寿なのはめずらしい。酒はほろ酔い程度に飲めば、長寿の薬となるだろう。
52 酒と甘味
酒を飲むときは甘いものを食べてはいけない。飲んだ後、辛いものを食べてはいけない。人の筋骨がゆるくなる。酒を飲んだ後、焼酎を飲んではいけない。また同時に両方を飲んではいけない。
53 焼酎の飲み方
焼酎は毒があるから多く飲んではいけない。火をつけて燃えるのを見ても、熱を多く持っている。夏ならば、肌が多く露出しているので熱を逃がしやすいから、少しなら飲んでもかまわない。
焼酎を元につくった薬酒は多く飲んではいけない。鹿児島のあわもり、
佐賀の火の酒は、焼酎より濃い。外国の酒も飲んではいけない。酒の性格がわからないからである。焼酎を飲んだあとは、熱いもの辛いものなどを食べてはいけない。冬に焼酎を飲んで、体を温めようとは思ってはいけない。焼酎を飲みすぎたときは、緑豆の粉、砂糖、葛粉、塩、紫雪などすべて冷水で飲むとよい。温かい湯で飲んではいけない。
飲茶 ならびに煙草
54 薬の効用
かなり昔(大化改新または、大和朝廷の時代より以前)には、日本には茶というものは存在しなかった。中世(江戸時代より前くらい、と思う。)になり、中国から渡ってきた。そののちに、人々が味わい日用欠くことができない大切なものとなった。茶は、精神を落ちつかせ眠気をさますものである。
昔の中国の医者たちは、人の体から油を抜き出すとして茶は良くないと言っていた。でも、今では朝から晩まで茶を飲んでいるが、身体に悪い影響はないようだ。しかし、だからといって一度にたくさんの茶を飲むのはいけない。
抹茶は、茶の成分が強い。煎茶は、茶の葉を煎ったり煮たりするのでマイルドだ。日頃は煎茶を飲むのがいい。
食事のあとに、熱い茶を飲み、消化を助け渇きを癒すのがいい。茶に塩を入れてはいけない。腎臓を悪くする。
空腹のときは、茶を飲んではいけない。胃腸を悪くする。
濃い茶を多く飲んではいけない。気持ちを沈ませるからだ。
中国の茶は、煮ないで作るので成分が強い。
虚弱な人や病弱の人は、新茶を飲んではいけない。眼病、情緒不安、下血、嘔吐、下痢などが起こりやすいからだ。新茶は正月頃から飲むのがよい。人によってはその年の9月か10月ころから飲んでもかまわない。
新茶の毒に当たったら、香蘇散、不換金、正気散(感冒の薬)などを飲むといい。梅干し、甘草(マメ科の多年草、鎮痛・鎮咳剤になる)、砂糖、黒豆、生姜などを用いてもいい。
55 茶の冷と酒の温
酒と茶とは、性格が反対である。酒を飲めば気が立ち、茶は気を落ち着かせる。酒に酔えば眠くなるし、茶を飲めば眠気はなくなる。
56 湯茶は多く飲むな
吸物、湯茶とも多く飲んではいけない。胃腸に負担がかかるからである。多く飲まなかったら、胃腸に元気が生まれ顔色がよくなり美人になる。
57 茶と水と
薬と茶を煎じる水は、よいものを選ばないといけない。清らかで味の甘いものがいい。(軟水のほうがいい。)雨の中で清潔な器を使って雨水を集めるのもいい。地下から汲んだものよりいい。
58 茶の煎じ方
茶を煎じる方法は、弱い火で炒って強い火で煎じる。煎じるとき沸騰した湯に冷水をさすと、茶の味がよくなる。湯が沸いたとき苡(じゅつだま)の生葉を加えると、味も香りもよくなり、茶の性質もよくなる。
59
奈良茶粥
大和の国(関西のことだろう)では、みな茶漬けを食べている。小豆、ささげ、そら豆、緑豆、陣皮(
みかんの皮)、栗子、零余子(ヤマノイモの葉のつけ根に生ずる小さな固まり、養分の固まり)などを、使用している。茶漬けは食欲を増やし、胸のとおりをよくする。
60 煙草の害
たばこは天正(1573年)・慶長(1596年)年間の近年になって、他国から渡ってきた。「淡婆姑」は
日本語ではない。
煙草は、毒である。煙を吸い込むと目が回り倒れることもある。習慣になれば害も少なくなり少しは益もあるといわれるが、害のほうが多い。病気になったり、火事になったりと心配ごとが増える。習慣になると、煙草をやめれなくなり家計にも負担をかけることになる。
慎色欲
61 色欲の自制
若いときは、性欲が強く自制が必要だ。自制をしないと、腎を悪くし精気をなくし短命になる。食欲と性欲は、人の持っている欲望のもっとも強いものである。自制するのは難しいが、しないといけない。
62 交接の回数と年齢
男女の交接の周期は、20歳で4日、30歳で8日、40歳で16日、50歳で20日に一回である。60歳以上のものは、してはいけない。体力がある老人ならば一月に一回。
また人それぞれ体調や体力などがあるから、すべてこれが正解ではない。
また20歳までのものについては身体が成長していないので、回数が多いと身体に悪い影響がある。
63 情欲は若いときに慎む
若くて盛んな人は、性欲を抑えて過失のないようにしないといけない。また、性交をよくするために、熱薬興奮剤などを用いてはいけない。
64 二十歳前後
20歳までは、性交を慎まないといけない。
65 房中補益の説
40歳を越えても、性欲の強い人がいる。このような人は、無理に性欲を抑えるとかえって害になる。かといって、慎みがなければ害になる。このような場合は、精気をもらさず交接するのがよい。この方法は害がない。
66 腎の働きと情欲
性欲があるのに性交を行わないと、体に精気がたまりよくない。そのようなときは、入浴して
下腹部を温め、体の気を循環させれば問題ない。
67 房室での禁止事項
房室での禁止すべきことは多い。天変地異の災いは気をつけること。日蝕、月蝕、雷電、大風、大雨、大暑、大寒、虹げい(虹)、地震などのときは房事をしないのがよい。場所については、太陽の下、月・星の下、神社の前、先祖の墓前、聖人の像の前では、してはいけない。身体については、病気中、病後、心配ごとがあるとき、疲労したとき、空腹時、心が平静でないときは、いけない。また、冬至の5日前から、10日後まではいけない。女性の生理が終わっていないときも、いけない。
胎教というものがあるが、これは房室の禁戒のあとのことである。妊娠するまえの決まり事も、守らないといけない。
68 房事と尿意
小便を我慢して、房事をしてはいけない。竜脳(樟脳に似た芳香があり、香料の調合原料或いは薫香・口腔清涼剤・防虫剤に用いる。)、麝香(香料の一種、薬の材料になる)などの薬を用いて、房室に入ってはいけない。
69 懐妊と夫婦関係
「婦人懐胎の後、交合して欲火を動かすべからず」と、中国の医学書「医学
入門」に書いてある。
70 腎と脾と
腎は五臓のもと、脾は滋養の源である。腎と脾は、体の中心である。草木の根のようなものである。大切にしないといけない。腎と脾が丈夫なら、身体も健康である。
第四巻終